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* 電気・磁気19:TV(1897年:ブラウン管、1926年:ベアード実用化)

Q58:2次元(平面上)の画像を1次元の時系列信号(時間的に変化する音声のような単一波信号)にして伝送するのがTVの原理だが、どうやって2次元の情報を1次元に変えたのだろう?

織物というのは実に見事なもので、子供の頃、一本の糸から布ができていることを聞き驚嘆した記憶がある。これは1次元の物体を織り込むことで2次元平面を作ることに相当する。又逆に、2次元のものをほぐすことで、長くはなるが1次元状態に変換することができる。蕎麦やうどんはまさに2次元状にこねたパイ状の生地を細く切り刻むことで1次元状にして、調理しやすく食べやすい麺に仕上げている。この変換を電気通信に応用することはとても有効であった。なぜなら信号の伝送は基本的には1次元の時系列(時間の流れに沿って信号を並べること)信号を電気的に送ることで成されるからだ。モールス信号や音声信号はもともと1次元の時系列信号なので、そのまま伝送すればよい。しかし画像は2次元情報なので、これを伝送させるためには1次元信号への変換(ほぐし)が必要であり、そこでこの「麺ほぐし」の方法が有効になる。

 ところで、TVの開発は他の技術同様に、多くの開発者の積み重ねにより成されている。最初の画像の伝送はファクシミリの原理を提案した、英のべイン(Alexander Bain、英、1811~1877年)により1843年に特許化された。時計職人だったべインは、振り子の先に電気的な接触針を付け、金属版上の絶縁紙上に書かれ、絶縁をはがされた形状の文字を、ぶらぶらとゆっくり移動させながら走査(スキャン)し、これを1次元情報に変え、伝送を行った。一方の受信は、同様な振り子で紙の上に像を描くというもので、まさにFAXの原点である。このアイディアが電話機発明の30年も前に出されているのだから、ラジオの原点よりTVの原点のほうが早かったとも言える。ただこれは静止画の伝送であった。動画を送るためにはより早い画像変換(1次元化)が必要になる。そのアイディアは1884年、独のニポー(Paul Julius Gottlieb Nipkow、独、1860~1940年)により出された。彼はらせん状に穴を空けた回転円盤を用いて、画像を1画面1回転で高速走査できるニポー円盤を発明する。長い直径の円盤で、できるだけ直線的な走査を行い、多くの穴で多走査をすることで解像度を上げていたのである。

 さて走査系以外の展開を見てみよう。重要な発明が1897年、独のフェルディナント・ブラウン(Karl Ferdinand Braun、独、1850~1918年)によって成される。いわゆるブラウン管の発明であり、その後100年間もの長きに渡り使われることになるTV用ディスプレイがここに生まれた。ブラウン管はCRT(Cathode Ray Tube)とも呼ばれる「陰極線管」の一つであり、それは電気・磁気13、18話で見る様に1874年に始まるガイスラー管に始まり、クルックス管へと進化する歴史の中で発展的に生まれたものである。ブラウンの工夫は、クルックス管の光る面に蛍光材を塗りよりよく光るようにしたものであった。陰極線の走査は電界により行い、ブラウンはこれで最初のオシロスコープを作成している。1907年にはロシアのロージング(Boris Lvovich Rosing、露、1869~1933年)がニポー円盤とブラウン管を組み合わせた受像装置を提案、さらに1924~1926年にかけ英のベアード(John Logie Baird、英、1888~1946年)がニポー円盤を改良しこれを送信時と受信時に同期運用する事で、人の顔の動画の送受信に成功している。さて、ロージングの提案を改良し実用化レベルまで進めたのが日本の高柳健次郎(たかやなぎ けんじろう、日、1899~1990年)であり1926年の事であった。TV実証実験をリードした日本の早さに驚く。

 高柳は1899年浜松に生まれ、静岡師範学校(現、静大教育学部)、東京高等工業(現、東工大)に学び電子線による蛍光体の発光現象に興味を持つ。その後、浜松高等工業(現、静大工学部)が新設された時25歳で助教授として就任、ここで「無線遠視法(TV)」の研究を始める。この研究を始めたきっかけは1923年にフランスの雑誌で見たTVのコンセプトを描いた未来技術の画からの衝撃だった。そしてニポー円盤とブラウン管の組み合わせで実証実験に邁進、1926年「イ」の字を撮像、伝送しブラウン管に映し出す事に成功する。さらに高柳は、ニポー円盤のような機械式撮像方法では、将来性が無いと考え、1933年に開発された米のツヴォルキン(Vladimir Koz'mich Zworykin、露⇒米、1888~1982年)による、全電子式の撮像方法「アイコノスコープ」の技術を導入し、1937年に走査線441本、毎秒30枚という現在のテレビの原型を作り上げたのである。

 さて、TVは放送が無ければただの箱であるが、放送は次のように始まった。

1929年 - 英国放送協会 (BBC)が TV実験放送開始 
1935年 - ドイツで世界初の定期試験放送開始。ベルリンオリンピックの中継
1939年(昭和14年) NHK放送技術研究所による公開実験 
1953年(昭和28年) NHKテレビ放送開始、日本テレビ放送開始(民放初)

 白黒画像で始まったTV放送は、大衆に大いに受け入れられ、生活の楽しみの中心になる。その後、カラー化、音声多重、大画面化、ハイビジョン化、デジタル化、と進化を続けながら50年以上に渡り、生活スタイルや社会へ影響を与え続けてきた。しかし、最近は、インターネットの普及により若手を中心にTV離れが進んでいる。

宿題58: 最初の日本のTV番組はどのような内容だったか?

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