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* 熱・化学8:物質は原子から成り立つ、原子論(1803年:ドルトン)

Q30: ドルトンは哲学的な推論ではなく、化合物の持つ性質を基に「原子説」(物質は原子という最小粒子から成り立っているという説)を提言し、科学の世界に革命を与えた。しかし、後のノーベル賞化学者オストワルト(独1853-1932)は提言から100年後の20世紀になっても、この原子論を認めなかった。オストワルトが反対した理由とは?

 観なければ、確証はできない。まさに正論である。実験における観測の重要さをオストワルト(Friedrich Wilhelm Ostwald、独、1853~1932年)は主張し、終生、原子の概念は用いず、存在が確実な「エネルギー」の視点から自然現象を理解する立場を貫いた(エネルギーは見えるのか?という疑問もでるが…)。1909年にノーベル化学賞を受け、多くの若手育成に力を注いだ物理化学の大家である。しかし技術が未熟な為、まだ原子を観ることのできない時代にあっては、自然界の構成モデルを想像・仮定し、そのモデルにより現象に対する正しいらしい解釈を与えることは、科学の進展に大いに有効である。原子論はその代表的な例であった。

 ギリシャの哲学者デモクリトス(Democritus、ギリシア、紀元前460~紀元前370年頃)は「万物は原子(アトム)から出来ている」、という原子論を紀元前400年ごろ提言した(道具・力学5話参照)。これは哲学的推論によるものであり科学的根拠によるものでは無かった為、後の大哲学者アリストテレスによりあっさり(哲学的に)否定され、その考えは一度消滅した。しかしそれから約2000年後、ドルトン(John Dalton、英、1766~1844年)によって、原子論は科学的根拠を得ながら復活したのである。その根拠となったのは、ラボアジェの「質量保存の法則」(化学反応の前後で、総質量は変わらない)、プルーストの「定比例の法則」(化合物はその成分の割合が簡単な整数比になっている)、そしてドルトン自身の「倍数比例の法則」(同じ元素から化合物が2種以上作られる時、同じ元素の質量比は簡単な整数比となる)。これら全てを合理的に説明できるモデルとして、ドルトンは「原子モデル」を再導入したのである。

 時代は錬金術の時代から、化合物が元素から成り立っていて、電気で元素に分解できるという「近代化学の幕開け時代」に移行しつつあった。元素を「固有の質量単位を持った原子」と読み替えるのにそう時間はかからなかったのである。このように物は原子から成ると仮定すると、上記の「質量保存」「定比例」「倍数比例」の各性質は簡単に理解することができる。それはあまりに単純なモデルであるため、比較的容易に受け入れられた(オストワルトはむしろ例外だった)。しかも、ドルトン以前にも、アイルランドのボイル(Sir Robert Boyle、アイルランド、1627~1691年)は自分の見つけた「ボイルの法則」(気体の圧力と体積の積は一定、1662)を基に、気体は原子からなりたっているのではないか?と1600年代にすでに主張していたのである。

 さてドルトンだが、1766年にイギリス、カンバーランド州の小さな村に、クェーカー教の貧しい織物業者の第2子として生まれた。小学校しか出ず、独学で小学校教師になる。その後同じクェーカー教徒の哲学者、ジョン・ゴフと出会い、彼の影響で気象に興味を持ち、コツコツと気象観測を行うようになった。この気象観測は死ぬ前の日まで50年余り続けたようだ。27歳でマンチェスターに出て自然科学の教師になるが、34歳で学校をやめ、その後私教師をしながら科学の研究に打ち込んだ。ドルトンは根気強く続けた気象観測から、大気の中の水蒸気の性質(分圧)に強い興味を持つことになる。そしてこの実体験に基づく気体の考察が、ボイルの考えを引き継ぎ、後の原子論に至るようになるのである。大学に学ばない天才の一人であるが、彼の師は自然現象であったと言えるだろう。

 ドルトンは色盲でもあった。これは化学研究には非常に不利であり、事実彼の実験にはかなりの誤差(あいまいさ)が付きまとっていたようである。彼は自身の色覚異常をも研究対象にして、優れた研究成果を上げている。(この成果により色盲のことはドルトニズムと呼ばれることがある。)又、話術はあまり得意ではなかったらしく、これにより学校の教師職をやめ、個人教師に移ったようだ。さらに、ドルトン曰く「ヒマがなかったので」結婚はしなかった。おそらく家庭教師、気象観測、そして研究に明け暮れていたのだろう。原子論により世界的な名声が高まっても、クェーカー教徒としての慎ましやかな生活を続け、78歳マンチェスターで静かに没した。

宿題30: D君は、水は水素(H)と酸素(O)の原子から出来た化合物HOだと考えた。そして、水を構成する水素と酸素の質量比が1:8なのは、水素原子と酸素原子の質量比が1:8であるためと主張した。今のあなたは、水はH2Oであることを知っている。D君にどうやって、その間違いを教えたらいいのだろう?

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