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* 量子・相対論14:弱い力の提唱(1967年:ワインバークら)

Q91: 現在、自然界で働いている重力など「力」の種類は何種類あるか?

 たった4種類しかないの?少ないなぁと思ったかもしれないが、科学者達はこれを多すぎると考え、これらを1つに統一しようと努力してきた。そして、「電磁気力」と「弱い力」は同じ源であり統一的に説明できることが1967年に分かった(「電弱理論」の発見)。さらに1974年、それに加え「強い力」を含めた3つの力を統一的に説明できる「大統一理論」が提唱されて、その確からしさが検証されつつある。しかし残念ながら、まだ「重力」をも含めた完全な統一理論は完成されていない(「超絃理論」という候補がある)。ところが宇宙の開闢のなぞを解くビッグバンモデルによると、宇宙の始まりには力は1つしかなく、宇宙の膨張(エネルギー密度の低下)につれて、元は1つの力だったものが時間と共に分裂してきたと考えられている。まず宇宙が始まり10^-44秒後(こんな短い時間が測れるものだろうか?)に1つの力から最初に重力が分離する。次に10^-36秒後に原子核を作っている強い力が分離し、最後に10^-11秒後、電磁力と弱い力が分離して4つの力が出揃うことになったというものだ。(それでも全員が出そろうまで、10p(ピコ)秒しかかかっていない。なんという素早さだろうか!)

 その昔、電気の力と磁気の力は異なったものと考えられて来た。確かに物をこすり合わせて静電気を発生させた時に引きあう力と、磁石のN極とS極が引きあう力が同じだと言われてもピンと来ない。それらの力は電荷のクーロン則と、磁荷のクーロン則という形は似ているものの、別々の2つの法則だと考えられていた(1785年)。ところがその後、電気と磁気が互いに関係しあい、電磁誘導作用などお互いに相互作用を及ぼすことなどがわかってくると、これまでのばらばらな法則をまとめて表すことができないか?という発想が生まれ、英のマクスウェル(James Clerk Maxwell、英、1831~1879年)によって電磁気の法則としてまとめられたのである。この統一により「電磁波の存在」が予測され、その後実証された(電気・磁気8話参)。このように本来一つであるものが見かけ上分離して見えることは良くあることで、統一化することで電波のような新たな発見がなされる可能性があるのだ。

 ところで、「力」にはその作用を生む媒介である「粒子」(ゲージ粒子と言う)を必ず伴うことが、(場の)量子論により分かっている(量子・相対論13話参)。例えば、電磁力は荷電粒子が「光子」(粒子としての光の粒)をキャッチボール(交換)し合うことで生じている。電子が「光の衣」を着ていると言われることがあるのは、このキャッチボールの材料である光を常にまとっている、ということを意味している。その為、電子の動きを急に曲げたり、物質中を光速より速く進行させたりすると(そういう事が可能である)、着ていた光が電子から剥がされる現象がある(チェレンコフ放射)。このことより4つの力にはそれぞれ対応するゲージ粒子があって、重力は「重力子」(まだ見つかっていない)、電磁力は「光子」、弱い力は「ウィークボゾン」、強い力は「グルーオン」が媒体粒子(それぞれ素粒子の1種;量子・相対論13話参)となる。力の統一とはこれらの粒子の統一(同一化)をも意味している。

 さてここでワインバーグ(Steven Weinberg、米、1933年~)に登場してもらおう。彼は電磁力と弱い力を統一する理論を作りあげた代表者である。1979年にこの功績で旧友のグラショー(Sheldon Lee Glashow、米、1932年~ )そしてパキスタン人研究者のサラム(Abdus Salam、パキスタン、1926~1996年)と共にノーベル賞に輝いている。彼は1933年、ユダヤ系移民の両親の下ニューヨークに生まれた。1950年、ブロンクス科学高校に入りグラショーと同級になる。その後共にコーネル大に進学。卒業後ボーアの研究所に1年間留学をして研究の方向性を定め帰国。1957年、24歳でプリンストン大より博士号を得る。その後コロンビア大、UCバークレイ、ハーバード大、MITを歴任しながら素粒子物理の研究を進め、1967年いよいよ「電弱統一理論」を作りあげたのである。これは旧友のグラショーが1961年に提唱した電弱統一基本モデルを「自発的対称性の破れ」(南部陽一郎の発見⇒2008年ノーベル賞)の概念を用いて発展させたもので、最近(2012年)発見されたヒッグス粒子(Peter Ware Higgs、英、1929年~)の存在を仮定した理論にもなっている。

 電弱理論を簡単に紹介しよう。ビッグバン後10^-10秒の時間まで宇宙は1000兆K(ケルビン)の超高温状態にあった。これほど温度が高いと質量を与えるヒッグス粒子は蒸発しており、弱い力を媒介する粒子WボゾンとZボゾンは質量を持つことができず、本来無質量の光子と区別がつかなかった。つまりそれぞれの粒子が作りだす弱い力と電磁力がまだ同一状態にあったのだ。ところが10^-11秒以降に、宇宙の温度が下がり始めヒッグス粒子が現れると、自発的対称性の破れが生じW/Zボゾンは質量を得ることになった。この時、無質量である光子との分離が生じ、弱い力と電磁力も分離して現れて来たのである。2012年のヒッグス粒子の発見は、この電弱理論の証左となる大きな成果と言えるのだ。

 さて「強い力」とは原子核を固める役割の力だが、「弱い力」とはいったいどういう働きをしているのだろう?これは核内粒子のレプトンやクォークに作用しそれらを崩壊させて、粒子の種類を変化させる力であり、様々な「対称性」に影響を及ぼす重要性を持っている。物理法則は「C:粒子と反粒子」「P:鏡像」「T:時間の向き」に関して対称的に成立することが知られている(これらの方向を逆転しても同様な法則が成り立つという意味)。そしてこれらの対称性が全て満たされているのがこの自然界の特徴だと考えられていた。ところが1956年、中国系科学者、李(李政道、り せいどう、中国⇒米、1926年~ )と楊(楊振寧、よう しんねい、中国⇒米、1922年~ )は弱い力がP対称性(鏡像対称性)を満たしてないことを発見したのである。これは対称性という美しさを信じる科学者に衝撃を与えた。そしてこの発見は現在の自然界に粒子が多く反粒子が少ない理由のヒントにもなっている。「弱い力」という名前だが、その力の価値は非常に強いと言えるだろう。

宿題91:「5つ目の力」が考えられているというが、それはいったい何だろう?

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