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* 量子・相対論13:クォークの提唱(1964年:ゲルマンら)

Q89: 物質を構成する究極の粒子「素粒子」の種類はいくつあるか?

 物質の根源は原子である(道具・力学5話、熱・化学8話)、と思っていたら、原子の中身が原子核と電子から構成されていることが分かった(量子・相対論4話)。さらに原子核の中を見ると、陽子と中性子さらに中間子も入っているではないか(量子・相対論10話)。なにやら物質の根源を追求していると、ラッキョウの皮むきのように、うじゃうじゃと粒子が現れてくる、それ以上は分解できないという根源粒子は本当にあるのだろうか?そんな疑問もでてくるが、根源粒子は確かに存在し確認もされている。早くから見つかっていた根源粒子は、光の素である「光子」。さらに、原子核の周囲に有る「電子」もそれ以上分けられない根源粒子である。このような粒子を「素粒子」と呼び、現在の物理では全部で17種類あると考えられている。

 まずこれら17種を整理してみよう。素粒子は大きく分けて「物質を構成する粒子」と「力を作る粒子」の2種類があり、面白いことに前者はフェルミ統計に従うフェルミ粒子の仲間、後者はボーズ統計に従うボーズ粒子の仲間となる(現在、あらゆる粒子はこのフェルミ統計かボーズ統計のどちらかの統計規則に従うようにクラス分けされている。そしてそれぞれの代表的な素粒子が電子と光子である。)。

 物質構成粒子はさらに「クォーク」と「レプトン」に2分類され、

  クォークは(a:アップ、c:チャーム、t:トップ、d:ダウン、s:ストレンジ、b:ボトム)の6種

この名称は「フレーバー量子数」とも呼ばれる、

  レプトンは(νe:電子ニュートリノ、νμ:ミューニュートリノ、ντ:タウニュートリノ、e:電子、
  μ:ミュー粒子、τ:タウ粒子)のやはり6種で、

物質を構成する粒子は合計12種類となる。

 一方の力の源粒子は、ミクロの世界で活躍する3つの力(電磁気力、強い力、弱い力)を出す基であり、それらに対応して次の4種が知られている

  γ:光子、g:グルーオン、W:ウィークボゾン1とZ:ウィークボゾン2、の4種類、

これで合計16種。あれれ、1つ足りない?

 それは異色の素粒子で最近(2012年)見つかった「H: ヒッグス粒子」である。これは質量の源となり、粒子とは言え、この宇宙の中で空間を満たす「糊」のような役割をする存在。この糊のおかげで質量が現れると考えられている。ところで重力の基である「重力子」はどうなっているのだろう?これはミクロの世界ではあまりに微弱な力で、ほとんど無視できるため、素粒子の標準モデルには含まれず、また見つかってもいない。最先端の「弦理論」によって理論分析されているが、重力子の観測は不可能に近いと言われている。以上によりフェルミ粒子系のクォーク6種+レプトン6種、そしてボーズ粒子系の5種の計17種が現在、根源的な素粒子と考えられており、それらが素材となり力を作ることで物質を構成しているのである。

 さて、ここでクォークに注目しよう。どうしてこのような粒子が見つかったのか?それは原子核の中にいる陽子や中性子そして中間子を調べることで現れたのである。中間子なども素粒子ではないの?という声も聞こえるが、これはクォークによって構成される複合粒子(ハドロン)であった。例えば、陽子はu+u+d(アップ2個とダウン1個)で、中性子はu+d+d(アップ1個とダウン2個)、K中間子はs+u*(ストレンジとアップの反粒子)で構成される事が分かっている。陽子などを加速させて衝突させる実験を繰り返してゆくとこれらが分解されて出てくるのだ。1950年代には、このような細かい粒子が数十種類も現れたのである。一体、基となる粒子は何なのかさっぱり分からなくなってしまった。まさにラッキョウの皮を剥いていくと、中から山ほど微粒子が出てきたというわけである。これは困った、そこでそれらの粒子を整理分類したのが、米のゲルマン(Murray Gell-Mann、米、1929年~)であった。そして1964年ほぼ同時に、ツヴァイク(George Zweig、米、1937年~)も基本粒子のクォークモデルを提案したのである。

 ゲルマンは1929年ニューヨークで生まれた。家族はオーストリアからのユダヤ系移民、幼少より神童の才を示し、自然と数学への強い好奇心を持つ。15歳でイェール大に入学、数学コンテストで2位を取り19歳で物理学科を卒業、続いてMITに進学し22歳でPhDを得る。その後プリンストン研究所、シカゴ大を経て、1955年にはCal Tecに移り、なんと27歳で教授になった(日本だとまだ院生である)。ここには恰好の論客がいた、有名な奇才&天才のファインマン(Richard Phillips Feynman、米、1918~1988年)である。この出会いにより、2人は物理学上の愉快な激論を行い続けた。天才同士が出会い、さらに活性化しあう環境が米国の大学には備わっていたのである。

 クォークモデルは、言わば多数のハドロン(強い相互作用で結びついた複合粒子のこと)の分類法である。1950年~1960年代、山のように現れたハドロンを見て、超天才パウリですら「これなら植物分類学を学んでおくべきだった」と皮肉たっぷりに嘆いた。しかしゲルマンはそこで閃いたのである、多数のハドロン粒子は少数の基本粒子とその相互作用(力の基粒子:グルーオン)との関係で分類できるのではないだろうか、そして基本粒子に「フレーバー(種類)」「分数電荷」「色荷(カラー)」「スピン」「質量」などの固有量(性質)を与え、それらとグルーオンの関係を、数学の群論の手法を使って分類したのである。その方法を仏教の「八正道」からの類推で「八道説(Eightfold Way)」と名付けた。さらに基本粒子を、英の小説「フィネガンス・ウェイク」(ジェイムズ・ジョイス作)のかもめの鳴き声から「クォーク」と呼ぶことにしたのである。なんというお茶目さのあるGood Senceだろうか!当初、ゲルマン自身クォークはあくまでも分類上のモデルに過ぎないと考えていた。しかし事実は小説より奇なり、驚くことにその後の実験で6種のクォークが実際に見つかり、基本粒子としての存在が実証されたのである。尚、クォークには更なる内部構造はもはや無いと考えられている。本当の究極粒子という事…そのはずであって欲しい。

宿題89: ゲルマンとファインマンは物理学上の深淵な議論を戦わせて、一歩も譲れない状態になった時、ユーモアいっぱいにお互いを罵りあった。「チクショウ、Gell-Mann、お前の名前からハイフォンを取ってGellmannにしてやる!」とファインマンが叫ぶと、これに応じてゲルマンはなんとののしり返しただろう?(そんなの分かるわけない?)

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