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* 熱・化学22:プラスティック(1909年 ベークランド)

Q74:プラスチック(合成樹脂)は便利だが、地球環境上、課題があると言われている。その理由をできるだけ上げてみよう。

 プラスチック(以降プラと略)には上記のような課題があるものの、生活や産業の中で幅広く使用されており、その効用は極めて高い。この優れた素材はいつ頃発明され、どのような進化をして来たのだろう。プラはまず天然の中に、手本となる素材があった。「Plastic=樹脂」という名のごとく、元々は樹木から出てくる脂成分(樹液)を利用した材料である。最古の材料として、「漆(うるし)」が上げられる。これは漆の樹脂を利用した塗装材であって、非常に強く美しい耐性塗装ができ、9000年以上の昔から漆器などに使われていた。又、樹脂が地中に流れ込み化石化した「こはく」は硬い褐色の宝石形状を持ち、ペンダントなどの装飾品やパイプなどに使われている。さらに、ゴムの木の皮から出る白い樹液は、「天然ゴム」としてボールやクッション材などに古くから使われている。その他ラックカイガラ虫という昆虫が出す蝋質の「シェラック」はニスやワックスに利用されて来た。

 ところで、これらの天然樹脂は産出量が少なく扱いも難しいため、これに代わる量産可能で安価な人工材料が長い間、期待されていた。そこで生み出されたのが、合成樹脂すなわちプラスチックである。最初に生まれた合成樹脂は、仏のルニョー(Henri Victor Regnault、仏、1810~1878年)らによって合成された「塩化ビニル」であった。1835年エチレン(C2H4)と塩素(Cl)で塩化ビニル・モノマー(C2H3Cl)が合成され、その後この材を日光に当てておくと、重合が進みポリ化する事が分かり、1838年ポリ塩化ビニル(通称;塩ビorビニール)が生まれる。しかしこれは熱分解しやすく不安定であったため、実用化は1928年米シーモン(Waldo Lonsbury Semon、米、1898~1999年) による添加剤による改良まで90年も待たねばならなかった。塩ビは安価で丈夫なため、電線の被覆材や水道パイプ、レコード盤、農業用ビニルハウス材等に幅広く用いられている。又「ポリスチレン」は1836年、独のジモンによって発明され、97年後の1933年に実用化された。これは熱可塑性(高温で柔らかくなる)をもつ成型しやすいプラであり、プラモデルの材料や断熱材の発砲スチロールとしてよく用いられている。

 少し時代を戻すと、最初に商業化された人工プラは天然樹脂に添加剤を加えた「エボナイト」と「セルロイド」であった。まず、天然ゴムの劣化を防ぐため、1839年米のグッドイヤー(Charles Goodyear、米、1800~1860年)が、天然ゴムに硫黄(S)を付け、ゴムを改質する。その後1851年、さらにこれを硬化させエボナイトと名付けた。エボナイトはボウリングの玉や楽器のマウスピースなどに使われていて、プラというより硬化天然ゴムである。「セルロイド」は、1856年に英のパークス(Alexander Parkes、英、1813~1890年)によってニトロセルロースという天然植物材に樟脳を混ぜることで発明され、1869年に米のハイアット(John Wesley Hyatt、米、1837~1920年) によって実用化された。セルロイドはその後、1880年台後半から写真フィルム材料として米コダック社が多量に使ったため、大ヒットする。ただし、摩擦により発火しやすい欠点を持っていたため、映画会社の火災事故が多発してだんだん使われなくなった。ただし現在でもピンポン玉やギターピックなどには使われている。

 天然材を用いない完全人工プラが実用化されたのは1909年、米の科学者ベークランド(Leo Hendrik Baekeland、ベルギー⇒米、1863~1944年)の発明した「ベークライト(商標)」であった。一般名称はフェノール樹脂であるが、商標のほうが有名になっている。これは石炭から得たコールタールを分離して作ったフェノール(石炭酸)とホルマリンを触媒下で合成することで得られる熱硬化性(高温で硬くなる)プラであり、難燃性、耐熱性、電気絶縁性などを有するため、現在でもプリント基板など電気回路の絶縁体ベースや、やかん、なべ等の取手として広く使われている。1930年代、先に述べた塩ビやポリスチレンなどが実用化されると、ナイロン(1935)など新しいプラ材料が発明されその応用範囲を広げた。さらに戦後、石油化学工業の発展により次々に新たなプラが開発される。そしてABS樹脂(1948)、PET(1948)、ポリエステル(1953)、ポリプロピレン(1957)、ポリカーボネート(1958)、ポリイミド(1964)等が広い分野に応用されていったのである。

 プラは炭素(C)と水素(H)を基本元素とした有機材料を基本単位(モノマー)として、列車をつなぐようにどんどん連結(重合)させ高分子(ポリマー化)合成することで作られる。ポリ○○という「ポリ」はこの高分子化を意味する接頭語で、本来はポリエチレンとかポリプロピレンと材料を示すものだが、一般にはポリバケツやポリ袋のように汎用的に間違って使われることが多い。ところで現在90種類を越える多種のプラが使われているが、これはプラに万能なものが無いためとも言える。そこで、プラを大きく分類すると、まず熱で硬くなるか変形するかで、「熱硬化性」(フェノール樹脂、エポキシ樹脂など)と「熱可塑性」(ポリエチレン、ポリカーボネートなど)の2タイプに分類される。熱可塑性はさらにその機械的強度により「汎用プラ」(ポリエチレン、ポリスチレンなど生活の場でよく使われ、強度はやや弱い)と「エンジニアリングプラ」(ナイロン、ポリカーボネートなど強化、耐熱化されている)に分類される。そしてそれらの特徴を生かしながら様々な場所に使われている。ただ、昨今の環境問題への影響を考えると、使用後にすぐ捨てられるリスクがあるもの(例えば、商品の梱包袋など)についてはだんだん、利用されにくくなって来ていて、比較的長く使われる素材に関しては、そのリサイクル技術が開発されつつある。

宿題74:最近のプラスチックの性質として、正しいものを次の中から選べ、 ①電気をよく通す、②分解されやすく環境に良い、③燃えにくい

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