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* 量子論・相対論3:特殊相対性理論(1905年:アインシュタイン)

Q64: 新幹線や飛行機に乗り、景色を見ると多くのものが後方に進む(飛び去る)ように見える。ところが一つだけそう見えないモノがあるのだが、それは一体何だろう?

 実に不思議なことである。自然界の中で最も速いスピード(秒速30万km)で走る「光」は、その最高速の「光」自身に乗って見ても、やはり光速で走っているのである。それ以外のものは、乗り物の速さの分だけ、遅く見えるか逆方向に進むのだが、光だけはそうならない。アインシュタインは誰よりも早くその事に気付き、マクスウェルの電磁気理論に「内在されていた課題」を解決したのである。そしてそこから、人類の自然認識を革新させてしまう「特殊相対性理論」が生み出され、原子力や宇宙の時空間モデルの根拠になった。

 科学史上、天才中の天才と言われるアインシュタインだが、その生い立ちはかなり平凡である。1879年、独ウルム市に平凡な布団屋の長男として生まれる。2年後、妹マヤが誕生、2人仲良く育った。言葉の獲得が遅く「知恵遅れではないか?」と心配されたが、そのおかげで(?)図形的な把握能力(右脳)が発達する。母の影響で音楽に親しみ6歳からバイオリンを習い、これが生涯の趣味となった。音楽は右脳発達にも有効だったのだろう。4歳の頃、父からもらった「磁針」がいつも同じ方位を示すことに驚き、背後に潜む見えない「力」に強い関心を抱くようになる。教育は学校というより10歳の頃から家に来るようになった貧乏医学生のマックス・タルムードから科学の通俗書やカント哲学、ユークリッド幾何学や数学など多くを学んだ。アインシュタインは一人でコツコツ思考をめぐらせるタイプであるが、そのスタイルは少年時代に既に培われている。友人たちと群れて遊ぶのではなく、一人で静かに遊び独学することを好んだ。

 さて、電磁気学に内在されていた課題とはいったい何か?それは走るモノ(系)から見た現象の奇妙さにある。例えば電線に電流を流すとその周りに回転磁場が生じる(アンペールの法則;電気・磁気5話参)、では電流が流れる系に乗ってこの現象を見るとどうなるか?電流は止まっているように見えるので磁場はその場合生じないことになる。一方では磁場が発生し、見方を変えるだけで磁場が消滅するのはおかしいではないか?ニュートンの力学ではこんな奇妙なことは生じない、力学現象はどのような等速運動の系(慣性系)から現象を眺めても、同等に見える。つまり慣性系の変換(ガリレイ変換)に対して、ニュートンの方程式は変化しないが、電磁気のマクスウェルの方程式は変化してしまうのである。これは電磁気の式に未熟で不充分な点があるに違いないと、ほとんどの科学者が考えていた。しかし答えは全く逆であった。電磁気の式が正しく、なんと200年以上、厳密で正しいと考えられていたニュートン方程式のほうが、アインシュタインによって修正されることになるのである。

 電磁気の式は、走る乗り物から眺めると、式自身が変化してしまうのだが、ある工夫をすると変化しないようにできる。数学者ローレンツ(Hendrik Antoon Lorentz、和蘭、1853~1928年)は1900年にこの変換規則を見つけた(ローレンツ変換;電気・磁気14話参)。しかしこの観測系変換のルールは極めて異様であった。観測系のスピードが光速に近づくにつれ、空間は縮み、時間はゆっくり進むという理解しがたい状態になるためだ。もちろんこんな奇妙なルールをニュートンの式に適応することなどできない、と誰もが考えた。しかし、科学革命の1905年がやって来る、特許庁の技師で余暇に物理を研究していた、若干26歳のアインシュタインは、よりシンプルな仮説「光速度不変の原理」と「慣性系による法則不変の原理」を基に、簡潔にローレンツ変換を導き、マクスウェル方程式の正しさを示すと共に、ニュートン方程式のほうを修正してしまったのである。この革命的な論文に対する反響は当初ほとんど無かった。ところがしばらくして、あのプランク(量子・相対論1話参)から賞賛と質問の手紙が届いた。そして数ヶ月後、アインシュタインは追加の論文を書く、そこには有名な「E=MC^2」公式が現れていた。それは質量がエネルギーと等価で、エネルギーに置き換える事ができるというとんでもない内容を示唆していたのである(これが原子爆弾の原理につながる)。これには世界中が仰天してしまった。

 科学の正しさは、論理の美しさだけでは証明されない。それが実験で実証されて初めて正しいと認められる。そして相対論が導いた信じがたい結論と予測はすべて、その後の精密な実験でコツコツ実証されて行った。例えば、①「光速に近い速度で走るものの時間がゆっくり進む事」は、光速に近いμ中間子の生存寿命が予想より長くなる結果より、②「光速に近づくと質量が重くなる事」は、シンクロトロン加速器で光速近くまで加速した電子の質量が静止時に比べ2000倍も重くなってしまうことから、さらに③「質量がエネルギーになる事」は原爆や原子力エネルギーの実証より確かめられていったのである。また人間の思想にも強く影響を与えた。相対論がものの考え方に与えた意識革命はまず「法則の対称性の重要さ」である。つまり「いかなる空間座標(慣性系;等速運動する乗り物)から現象を眺めても、法則は変化してはならない」という相対性原理が、この宇宙の法則を支配している、という事実をこれまで以上にはっきり認識させた。そして「光速を越える速度は有り得ない」(=進む速さには上限がある)ことを示したと同時に、長い間科学者をまどわせ続けた「エーテルの亡霊」(電気・磁気14話参)を不要な仮説と完全に捨て去ったのである。我々の宇宙観を根底から変えてしまったと言えるだろう。

宿題64:最近、光速を越えるニュートリノ粒子(2011年9月)が見つかったとの発表がヨーロッパの共同研究機関からなされたが、もし超光速粒子があったら、タイムマシンが作れるのだろうか?

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