teruji-kun TENSAI-UFO...天才UFO vr2.0

HOME | 道具・力学 | 熱・化学 | 電気・磁気 | 量子・相対論 | 電子・IT・新技術

* 電気・磁気20:テープレコーダ(1899年:プールセン、1930年:フロイマー)

Q59: 発明はよく、過去の2つの技術の組み合わせでなされることが多い。テープレコーダの磁気記録技術も、よく知られた2つの先輩技術の組み合わせで発想された。一つは「電話技術」、さてもう一つの技術とは何だっただろう?

 1878年、米の機械技師で発明家のオバリン・スミス(Oberlin Smith、米、1840~1926年) はエジソンを尋ね、蓄音機をデモしてもらった。音楽好きの彼はすぐこの一台を手に入れたのだが、その音の悪さにうんざりして自分で改造を試みた。その時電話技術と音声の電磁気録音技術の組み合わせに考えが及び、ファラデーの電磁誘導の原理を生かして、「電話機からの音声電流をコイルに流し、コイル内部で鋼線ワイヤを走らせればワイヤに磁気記録ができるのではないか?」とひらめいた。そして特許を申請する(1878年米)。これが最初の音声磁気記録の発明となった。そして、10年後の1888年にこのアイディアを専門誌に公開する。(参考;再生は記録の逆をやれば良い、つまり、コイル内部に記録した鋼線を同じ速度で走らせ、コイルからの起電流を電話の受話器で聞くと考えた。)

 大衆の前に実際の磁気記録装置が姿を現したのは1900年のパリ万博であった。デンマークの電話技師ポールセン(Valdemar Poulsen、デンマーク、1869~1942年)は1898年に「ピアノ線を円筒形の筒に巻きつけ、筒を回転させることで、狭ギャップ電磁石ヘッドがピアノ線表面をなぞる装置」を発明し、試作をする。これもワイヤレコーダの一種であるが、現在も使われる「狭ギャップの磁気ヘッド」が新に生まれ、後のテープレコーダの原型となった。この試作器がパリ万博でデモされ、当時の皇帝ヨゼフ1世の声を録音し、多くの人を驚かせた。彼はその後、「直流バイアス法」を発明しさらに歪みを改良する。また記録媒体についてもワイヤからテープやディスクの可能性を発案、検討したのである。

 記録媒体としてのワイヤは伸びやすく、音質も良好ではない。軍用途には少し使われたが、磁気記録が実用レベルになるためにはワイヤーから磁気テープへの進化が必要であった。これを実現したのが独の技術者フロイマー(1928年)(Fritz Pfleumer、独、1881~1945年)である。彼はたばこ紙に磁性粉を塗り世界初のテープレコーダを作った。磁性粉の粒子がまだ粗く、音は悪かったが、様々な磁性体を試すことで、酸化鉄の粉が良好な記録特性を示すことを発見する。独AEG社がこの技術に目を付け、さらに磁気ヘッドやテープ技術を改良、1935年に商品Magnetophonを市販した。さらに独BASF社による磁気テープ材(アセテート樹脂)の改良が進み、第2次世界大戦中のナチスによって、テープレコーダは政治戦略や軍の高速再生秘話通信に大いに使われた。又、1939年あたりからフルトベングラー(Wilhelm Furtwängler、独、1886~1954年)など著名指揮者のオーケストラ録音にも利用され始め、貴重な音楽財産が残ることになる。尚、この頃日本で優れた「交流バイアス法」(1938年、東北大、永井他)が発明され、音質の飛躍的改善がなされた事も注目に値する。この交流バイアス法は回路が異常動作をしたことから偶然見つかった現象であった。

 ドイツ敗戦の後、テープ録音技術はアメリカに移り(盗まれ)発展することになる。米3M社は1947年、録音テープの販売を開始、同年、米アンペックス社もドイツ製マグネットフォンをベースにテープレコーダを作成、放送局やレコード会社に納入した。この便利な装置はラジオ放送やレコード作成録音に広く使われるようになる。さて、敗戦後の日本で、いち早くこのテープレコーダの開発を行ったのが東京通信工業(現ソニー)であった。創業者の井深と盛田はNHKで進駐軍の持ち込んだテープレコーダを試聴し、その魅力に取り付かれる。すばやくこの装置をコピーし1950年に商品開発、販売を始めた。なんと米アンペックスに遅れることわずか3年である。モノも情報も無い敗戦国であることを考えると異常な速さだったと言えるだろう。

 テープレコーダは、その利便性からまず放送局を中心に普及していったが、声や歌が記録できることから、大衆へのマーケット性も有していた。蘭フィリップス社が1962年に開発した、小型パッケージにテープを封入した「コンパクトカセット(カセットテープ)」はその特許を無償公開したことから、瞬く間に世界中に普及することになる。当初は、会議の音声録音程度に考えられていた音質だったが、1970年あたりから主として日本メーカーの開発競争により飛躍的に音質が向上し、音楽を充分楽しめるレベルに達する。そして1979年、ソニーから発売された「ウォークマン」により、携帯用音楽機器としてのマーケットが開拓され、カセットテープの普及は頂点を迎えることになったのである。現在テープ録音機の時代はほぼ終焉を迎えているが、今だにプロ用音楽録音、ラジオ放送局やTV局のビデオテープでその技術は使われている。(テープメディアの使い勝手のよさと長期保管性の高さによる。又、音楽マニアからはその音質の良さが再評価されている。)

宿題59: テープレコーダーの発明と進化は、音楽文化の発展に多大な影響を与えたといわれている。その功罪をできるだけあげよ。

*NEXT

次は何を読もうか↓(下の目次か右側のリンクより選んで下さい)

内部リンク

外部リンク