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* 熱・化学19:エントロピー増大則発見(1865年:クラウジウス)

Q45: 地球環境問題について「エネルギー資源の枯渇が将来の人類の課題である」と学んだC君は、別の日、理科の授業で「エネルギーは保存するので、宇宙全体のエネルギーは時間が経っても無くならない」と学び、いったいどちらが正しいのか分からなくなってしまった。この2つの話題には矛盾があるのだろうか?

 このクイズ、一方は「エネルギーが使えなくなり、減って行く」と言っていて、他方は、いや「エネルギーの量一定であって、減りはしない」と言っているように見える。19世紀のC君ことクラウジウス(Rudolf Julius Emmanuel Clausius、独、1822~1888年)もこの一見矛盾するような命題を知り、悩んだのである。そして自然界には「エントロピー」という(量的というより)質的な概念が有効であることを発見する。さらにこれらの命題が矛盾しないどころか、宇宙の根本的な重要な2つの真理であることを見出したのである。

 クラウジウスは1822年、プロイセン王国の町ケスリン(現ポーランド)で生まれた。父は牧師であり、小学校の設立者でもあった。父の学校で初等教育を受け、その後はシュテティンのギムナジウムで学ぶ。1840年ベルリン大学に入学、数学と物理を専攻する(史学にも興味があったようだ)。当時の講師には、物理学者のオーム(電気・磁気6話参)、数学者のディリクレ(熱・化学10話参)などそうそうたるメンバーがいた。経済上の理由もあり、1850年までベルリンのギムナジウムで物理を教えながら研究を進め、1847年、最初の論文(太陽光の大気散乱)を発表、ハレ大学から博士号を与えられる。1850年、いよいよ熱力学に関する論文「熱の動力、およびそこから導かれる熱理論の法則について」を発表。熱の経験的な性質を数学的な切り口で整理し、「エネルギー保存則(熱力学第1法則)」と「エントロピー増大則(熱力学第2法則)」に矛盾無くまとめ上げたのである(エントロピーの概念を提言したのは1865年)。

 クラウジウスはどうやってエントロピーの概念を発見できたのであろう?それはカルノー(熱・化学11話参)のモデルを参考にしながらも、彼がベースとした「熱素保存」の仮定をあっさり払拭し、ジュールの実験(熱・化学16話参)でほぼ確実となった、エネルギー保存則(熱・化学15話参)を基に、次のような流れで思考を進めたからではないか。

1)高温熱源T2から熱量Q2を吸収し低温熱源T1に熱量Q1を移しながら外部へWの仕事をする可逆過程
(カルノーサイクル)において、『Q1/T1 = Q2/T2』(可逆の時)なる等式が成立することを確認。

2)熱が低温の物体から高温の物体に自然に移ることは無い(不可逆過程)ことに注目、
 これがエネルギー保存則では説明できず、先の式は『Q1/T1 > Q2/T2』(不可逆の時)となるため、
 これを一般化することで、次の有名な式が成立することを、証明した。(第2法則)
   Σ(Qi/Ti)≦0、  ∫(dQ/T)≦0  (等号は可逆、不等号は不可逆の時)

3)ここで「Q/T」という分数が目立つ。そこでこの量をSとしエントロピーと名付ける。
 さらにその性質を調べると、孤立系では必ずSが増加することを発見。(エントロピー増大則)(1865年)

 果たしてこれでエントロピーがイメージできたであろうか?何度説明を聞いてもよく分からないのがこのエントロピーである。

 そこで2種類の方法でイメージ化してみることにしよう。まず水流で類推する、高さH2の場所に質量mの水があり、これが高さH1に落ちながら外にWの仕事をするモデルを考えると、E2=mgH2の位置エネルギーが、落下後E1=mgH1に低下し仕事W=E2-E1=mg(H2-H1)をすることになるが、ここでは「E1/H1=E2/H2(=mg)」が成り立っている。これと先ほどの『Q1/T1 = Q2/T2』なるカルノーモデルを比較すると、温度と高さ、位置エネルギーと熱量がうまく対応していることが分かる。そうするとS=Q/Tなる量はmg= E/Hに対応できそうだ。これはつまり「重力の素」のような量と考えられ、熱に言い換えると「熱量の温度比率」、もっとざっくり言うと「熱容量みたいなもの」と類推できる。つまりS×ΔTは熱エネルギーであって、エントロピーSは温度(差)と熱エネルギーをつなぐ係数と言える。(これは私の愚考である、信じないように)

 もう一つのイメージは、ボルツマン(Ludwig Eduard Boltzmann、墺、1844~1906年)によって統計力学的に解釈され「S=k・log(Ω):k:ボルツマン定数、Ω:系の状態数」と解明された(えっ余計にわからない?!)。ここでボートを10名のオールで漕ぐことを考えてみよう、旨く進めるにはオールを全員が揃えて漕ぐ(漕ぎ方の状態数が少ない)ことがポイントである。この時エネルギーが旨く水に伝わり一方向にボートが進みだす。このようなオールの揃った運動状態はエントロピーが低い状態であり、エネルギーの「質」が高く、利用効率の良い状態と言える。一方、オールを四方八方に乱雑にこぐと、ボートはほとんど進まない状態(漕ぎ方の状態数が多い)になる。同じエネルギー量を使いながら有効な推進力を得られない状態であり、これをエントロピーが高い(エネルギーの質の低い)状態と呼ぶのである。熱とは基本的に分子が四方八方に乱雑に運動している状態であり、エントロピーが後者のように高く(つまり質が低く)利用効率の悪いエネルギーとみなされるのである。これがエントロピーが「乱雑さ」と呼ばれるようになった理由である。さて、分かっただろうか?エッ、頭のエントロピーが増大した?

宿題45: クラウジウスはこのエネルギー保存則およびエントロピー増大則が、実生活にどう影響するのだろうと考えを巡らせ、「石炭はいずれ枯渇するはずだから○○をしないといけない」と、地球環境問題に関わる人類初めての提言を行っている。いったい、どうしなければならいと主張したか?

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