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* 電気・磁気6:オームの法則(1827年:オーム)

Q36: 電気の最も基本的な法則であるオームの法則とは、加えた電圧に比例して電流が流れる(電流=電圧/抵抗)というしごく当たり前の性質のように思える。一体この法則が成り立たない現象というのはあるのだろうか?

 オームの法則は、「抵抗=電圧/電流:R=V/I」とも表現され、抵抗の定義のような印象すら与える当たり前の「事実」とも思えてしまうが、これが「法則」として発見され認知されるまで、意外なほどのドラマがあった。まず、キャベンディッシュの項(第23話)でも示したように、この法則はオーム(Georg Simon Ohm、独、1789~1854年)の発見ではなく、オームの50年も前にすでにキャベンディッシュによって発見されていた。キャベンディッシュは多くの発見を封印してしまったため、この最も基本的な電気の法則は再発見者オームの名が冠され、抵抗の単位は「Ω;オーム」となったのである。しかしオームの道のりも楽なものではなかった。

 オームが、電流と電圧の関係に興味を持ったのは、フーリエによる熱伝導の見事な分析結果を知ったためである(第33話参)。温度差と熱伝導に明快な関係が成り立つなら、その類推から、電圧と電流の間にも明快な関係が成り立ち、フーリエ同様の数学的手法で理論付けられるに違いないと考えたのである。時代はちょうど電流と磁気作用の関係(エルステッドの発見、第32話参)が発見されたりしていて電気伝導の現象に関心が高まっていた(キャベンディッシュは早すぎたとも言え、もし結果を発表したとしても注目を集めなかったかもしれない)。

 オームの法則の実証は、法則のシンプルさに反し意外なほど難しい。オームは「オームの法則」が成立することをおそらく強く確信していたのだろう、あらゆる「失敗」にもめげず、実験の精度を高める工夫を行っている。まず「電圧」の課題である。当時使える電源はボルタ電池のみであった。ところがこの化学電池には内部抵抗のばらつき、分極現象による電圧のゆらぎなどがあって、電圧を安定に維持することができない。しかも当時「電圧計」なるものは存在せず、この化学電池による実験はことごとく失敗したのである。私も小学生の頃、乾電池を使ってオームの法則を確かめようとしたことがあるが、電池の内部抵抗を考慮せず測定したものだから「オームの法則は成立しない」という測定値が出て、随分悩んだものであった。

 そこでオームは当時ゼーベック(Thomas Johann Seebeck、独、1770~1831年)により発見された(1821年)、熱電対による起電力を用いることで安定な電圧源を得た。これは2種の異なる金属(または半導体)を接合し両端を異なる温度に保つと温度差だけで決まる安定な電圧が発生するという現象である。可変かつ安定な電圧源が得られたことは実証への大きな前進であった。電流については、電流による磁針の回転をねじり秤により測定することで正確に測ることができた(第32話参、電流計発明のなんと2年前!)。そして抵抗は、長さや太さの異なる導体を準備して利用。以上の工夫と改良で、同様な研究を行っていた競争相手を凌ぎ(この時代にも同じ研究テーマでの競争があった!)、次の結果を得たのである(1826年)。

・電流は導線の両端にかけた電圧に比例する(I=V/R)
・比例定数の逆数である「抵抗」Rは、電圧や電流にはよらず、導線の長さに比例し断面積に逆比例する。
 (R=ρ・l/S、ρ;比抵抗、l;長さ、S;断面積)

 翌年1827年に発表されたこのオームの成果は、当時のドイツ哲学を支配していたヘーゲル学派によって強い批判にあい自国ではなかなか認められなかった。彼らの主張は「論理的な演繹が不明瞭、実験からの推論だけでは真理として認めがたい」という否認理由だった。これによりオームは待望の大学教授のポストを得ることに失敗する(オームは当時高校教師であった)。ところが、ドイツ以外の国でオームの成果がじわじわ評価され始めたのである、イギリスのホイートストン(Sir Charles Wheatstone、英、1802~1875年電気回路の発明者)、米のヘンリー(Joseph Henry、米、1797~1878年:ファラデーと共に電磁誘導の発見者)、ロシアのレンツ(Heinrich Friedrich Emil Lenz、露、1804~1865年:自己誘導の発見者)らの賞賛とともに、発表から14年後、英国王立協会が「コプリー・メダル」を与え、全員一致で国外協会員に選ぶ。これによりようやくドイツも重い腰を上げた。ようやく8年後の1849年にミュンヘン大学の大学教授に任命され、念願のオーム教授が誕生したのである、なんとオーム60歳の時だった。

宿題36: 電子(e)に電圧(V)を駆けるとe×Vに比例する力を生じるため、電子はどんどん加速されることになる(物の落下速度が増すのと同様)。つまり電子の流れである電流は時間とともに増え、オームの法則は成り立たないように思えるが‥??

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