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* 道具・力学3:保存食の発明(BC4000:チーズ、1804:瓶詰め)

Q3:人類最古の保存食は何だったか?

 人間がサバイバルを行う上で何より必要となるのは、飢えからの回避である。フランスの作家ジュール・ヴェルヌが書いた科学小説(海底2万マイル、15少年漂流記、神秘の島など)を読むと、生きるためにまず必要なものは水と食料(そして火)であることがよくわかる。では人類は食料の保管(保存)に関する技術をどのように発明し発展させてきたのだろうか?食はコンビニやスーパーに行けばいつでも手に入り、飽食気味でダイエットや少食が尊ばれている現代人も、一度自分をサバイバル状況に置いて見ると良い。さて、一人孤島に置かれた「私」はまず何をすればよいのだろう?

 食の技術で重要な事は、火の利用と保存の技術である。火については既に説明したので、ここでは燻製、チーズ、缶詰、冷凍などの保存技術の発明について考えてみよう。人類が古く石器時代あたりから利用していた食材の保存法は、くんせい(煙で食材を燻す)、乾燥、塩漬け、糖漬け、酢漬け、発酵などであり、どれも偶然に見付けた産物のようだ。例えば、くんせいは、洞窟につるした肉がたまたま木を燃した煙で燻され、それが美味しくかつ長期保存に耐えたことから利用が始まったとされている。これは人類が火を使いだした頃から始まったようで最も古い保存法と考えてよいだろう。又、チーズは古代モンゴルで、遊牧民が羊の胃袋にヤギの乳を入れ、らくだで旅をしていた時、乳が胃袋の中で揺られ続けてたまたま固まった乳の固形物を見つけたのが始まりと言われている。偶然が発明のきっかけになることはこのように非常に多い。しかしその偶然に対して鋭い観察力を持ち合わせないと真の発見には結びつかない。このためには遊び心や大いなる好奇心を常に持っていることが大切である。

 古代人が利用していた、保存食は具体的には次のようなものだったと想像されている。まず自然が準備した保存食として木の実や植物の種子が上げられる。クルミ、アーモンド、落花生などを始めとしたナッツ類や、米麦など植物の種子は、植物の繁殖・繁栄のため、腐りにくく作られている。固い種皮で守られ、湿気、酸化、雑菌の繁殖が起こりにくい構造(乾燥していて硬い実を持つ)になっていて、通常2~3年の保存に耐える。これは自然界が作った知恵であろう。工夫により保存性を高めたものとしては、肉や魚の燻製、干し魚や干し海草などの乾物、チーズや味噌などの発酵食品、蜂蜜やジャムの糖食品、塩漬けや酢漬けによるハム、漬物、ピクルスなどに近いものがあったと考えられる。一般に食材は腐敗菌により短時間で腐敗してしまう(1861年;パスツールの発見)が、古代の人は腐敗菌のことなど知らないまま生活の智恵として、蜂蜜やジャムが腐りにくいこと、乾燥や塩漬けで日持ちするようになる事に気づき、その方法を利用していたのである。

 腐敗菌の繁殖を抑え、食物を長期に保存する方法として、画期的な技術がナポレオンの時代にフランスで発明された。これは長期遠征に出る軍隊にとって、栄養価の高い食料確保が勝利への必須戦術だったためであり、科学好きのナポレオンはそのような技術の発明に多大な懸賞金を掛けて、実用的なアイディアを募集したのである。そこで「ビン詰め」が発明(1804年;アペール(仏))された。これは当時「空気」が腐敗の原因と考えられていて、空気と食物を触れさせない指針を基に発想されたようだ。これがより簡便な「カン詰め」に進化(1810年;デュラン(英))し、現在使われているレトルト食品に発展、多大な産業に展開されたのである。このように「誤った指針から生まれた発明」でも技術として有効であれば実用化され、進化してゆく。そして真の理由は後付けされる。実際、腐敗菌の発見はビン・カン詰め発明の約50年後であった。

 もう一つの画期的発明、冷凍保存技術はビン詰め、缶詰からさらに約100年後アメリカで発明された。これは鮮度の落ちやすい果物(イチゴ)の保管に使われ始めたのが最初と言われている。ただ低温保存法は紀元前のエジプト時代や秦の時代に既に利用されていたことが、古代壁画や遺跡に記されている。雪や氷に閉じ込められた動植物が鮮度を落さず食料として利用できたことが、これらの発想を生んだのだろう。ところで冷凍保存のほうだが、これは腐食菌などの活動を抑えるために-18℃以下であることが分かっている。このような冷凍庫が一般家庭でも利用できるようになったのは、冷凍技術の進化のおかげで、1920年以降のことであった。主に果物の保存に使われ始めたが、その後冷凍食品が1960年あたりから普及を始める。当初はまずい、水っぽい、乾燥っぽい、と評判は良くなかったものの、その後の冷凍技術と解凍技術の進化、特に電子レンジの普及により1980年以降爆発的に利用が進み、現在では高級レストランで使われるほど改善、進化が進んでいる。「あんなものは‥」と考えない人が革命を起こすのである。

宿題3:パスツールは、腐敗を防ぐために高温加熱で腐敗菌を死滅させることが有効と考えた。しかし高温加熱はワインや牛乳の風味を台無しにしてしまう。そこで発明した滅菌法(保存法)はどのようなものだったか?

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