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* 熱・化学6:燃焼を酸化と解明、フロジストン説の否定(1777年:ラボアジェ)

Q25:1770年頃「水を長時間沸騰させると後に沈殿物が残る」のは水が土に変わるからだ、と信じられていた。ラボアジェはこの考えに納得できず精密な実験を行い、蒸留水をフラスコで100日以上沸騰させ続けたところ、確かにフラスコの底に少量の沈殿物が残った。ラボアジェはこの沈殿物を調べ、従来の説を否定する事に成功する。いったい彼は何を調べたのだろうか?今なら小学生にでもできることである。

 ラボアジェ(Antoine-Laurent de Lavoisier、仏、1743~1794年)は、化学という学問分野の父(=創始者)と見なされている。科学的な分析がガリレオに始まって以来、天文→力学→光→電気(磁気)とその興味の範囲を「観察」と共に拡大させて行った中、いよいよ観察だけでは直接見えない「物質の成り立ちとその変化」という化学の領域に入り込んできたのである。もともとは錬金術から始まったこの分野にようやく科学のメスが入る時代になったとも言える。もちろんラボアジェは「化学を起こそう」などと大それたことを考えたわけではない、結果的にそうなっただけである。彼はただ純粋に「精密に測定すること」に執着した初めての人間だった。とりわけ、重さ(質量)の測定に異常なほどこだわった。それまでのあいまいな測り方に性格的に我慢ならなかったのであろう。

 とは言え、単なる測定屋ではなかった。彼は本職は弁護士であり法律の勉強をしたことによって、ロジカルな考え方が身についていた。精度の高い測定とそのデータを基にロジカルな思考をめぐらせること。まさにこの科学的思考が彼の物質や燃焼に対する好奇心と結びつき、従来の古い神秘的な仮説を払拭していったのである。ちなみに彼が修正した従来の誤った説には次のようなものがある。

・燃焼に関する「フロギストン(燃素)説」→ 酸素との結合と解明し燃素説を否定
・物質の基は4元素説 → 33種の「元素」からなると現在の元素論をスタートさせる
・錬金術(物質を金に変える技術)→ 不可能と見破る

 又「発見」としては、
・生物の呼吸は体内に酸素を取り込む酸化現象
・水が酸素と水素からできている(水は元素ではなく化合物である事の発見)
・化学変化における質量保存の法則

そして、化学の始まりと言える著書「化学原論」を1789年に表し、化学という学問の大河を切り開くことになった。

 力学のニュートンに匹敵する天才ラボアジェは、1743年にパリで裕福な弁護士の家に生まれた。しかし幼児期に母を亡くし叔母のもとで育つ。法律を学び自らも弁護士となったラボアジェは元来興味のあった気象や天文など科学的な対象に異常な好奇心を持ち、仕事の合間に様々な実験を行ったのである。この実験を支えたのが14歳年下の妻。すばらしい画才を持っていた彼女は夫の実験をまるで写真を写すように見事にスケッチし、それは後のラボアジェの著書に使われた。ところがこの妻の実家が徴税役人であったため、ラボアジェも徴税の仕事を手伝うようになる。これが後の悲劇に繋がるのである。(下の宿題25参照)

 ところで慎重なラボアジェも大きな失敗を残している。それはカロリック説(熱素説;蘭、ブールハーヴェ、1724年提唱)の支持である。火の基と考えられた燃素説を否定し翻した彼だが、熱の基については熱素という「元素」の一つと信じた。熱素は重さの無い元素と見なされていたため、彼の厳しい質量測定にかからず、この検証を見事にすりぬけ、大御所の支持を取り付けたのである。しかし、この歴史的誤りは、ラボアジェの死後、1798年になりようやくランフォード(Sir Benjamin Thompson, Count Rumford、英、1753~1814年)によって批判が始まり、ジュール(James Prescott Joule、英、1818~1889年)の仕事当量の発見(1843年)により崩壊することになる。しかしカロリック説はそれまでの間、見事に活躍(?)しカルノーサイクルなどの様々な発見を導く事になったのである。不思議なことだが間違った仮説が正しい発見を導くことも、科学史のまぎれもない真実であり、決して無意味とは言えない。

宿題25: フランスでは当時死刑にギロチン刑(首切り)を用いたが、これは最も苦しみが少なく人道的ということで導入されていた。ラボアジェも51歳の時に、徴税を行っていたという理由でギロチンで処刑されている。ところで、ラボアジェは処刑にあたり人生最後の実験をしようと企み、友人に自分が処刑されたら、自分の顔を良く見てある回数を数えて欲しいと頼んだ。ギロチンが本当に苦しいかどうかを調べるために行ったこの最後の実験(?)で彼は友人にいったい何を数えさせたのだろう?

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