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* 熱・化学1:フロジストン説(燃焼理論)(1703年:シュタール)

Q18: 物が燃えるとは、「酸素と結合すること」と学校で教わった正夫くんは直感的に変だと思った。紙にしてもロウソクにしても燃えながら煙を出し、形を失い最後は無くなるか灰になる、だから燃えるとは「モノの中の燃える成分を消費(煙に)して元の形を失うこと」と考えた。あなたが先生なら正夫くんへどうアドバイスするか?

 火の不思議さと神秘さに魅了されて来た人類は、18世紀末ようやく「燃える」ことの仕組みに気付くことになる。「酸素との化合」がその正体であった。しかしその100年ほど前、誤った仮設が提唱され、この仮説により初めて「科学的」に燃焼という現象が説明され、多くの天才化学者たちから確からしいと認められていたのである。正夫くんの考えたアイディアがまさにそれだった。「フロギストン(燃素)説」と呼ばれ、科学史上有名な誤りの一つなのだが、実は人類の恥でも何でも無くむしろこの誤りがあったからこそ、科学は飛躍的に進歩することができたといえる。この誤り仮説の意義と天才たちの格闘を見てみよう。

 1669年、ベッヒャー(Becher, Johann Joachim、独、1635~1682年) は、物質には「燃える土」という元素が存在し、燃焼はこれが物質から分離する現象であると考えた。この説を受け1702年にシュタール(Georg Ernst Stahl、独、1659~1734年 )は燃える元素に「フロギストン(燃素)」という名称を与え、燃えやすい物質ほどフロギストン濃度が高いと見なした。又、フロギストンは単独では存在できず他の元素と共存する性質を持ち、燃焼に空気が必要なのは、空気がフロギストンを好み、燃えるものからフロギストンを奪い取るためと解釈した。このフロギストン説により燃焼に関する様々な現象が「科学的」に大きな矛盾なく説明できてしまったため、当時の化学者はこの「発見」を賞賛、1777年にラボアジェ(Antoine-Laurent de Lavoisier、仏、1743~1794年)によって燃焼の酸素結合説が提唱されるまで100年もの長い間、真理と考えられたのである。

 ところでこのフロギストン説は、科学の発展を阻害したか?というとそんなことは無い。多くの化学者に燃焼という現象や元素という考えに関心を持たせ、むしろ科学の進化を促したのである。その一人にイギリスの牧師であったプリーストリー(Joseph Priestley、英、1733~1804年)がいた。彼は、フロギストン説の信奉者であった。当時のイギリスは産業革命の影響を受け多くの石炭が蒸気機関の燃料として燃やされていた。フロギストン説によると、空気に石炭からのフロギストンが吸収されどんどん空気がフロギストンで汚染されてしまう。今で言う「環境汚染」であるが、これを心配した彼はどうやれば燃焼空気からフロギストンを取り除き正常な空気に戻すことができるかという課題に熱中する。多くの実験の末、燃焼空気中で植物を生育させたり水銀灰を高温に熱したりすることでフロギストンが空気から脱離でき、その中では再びモノが良く燃え、生物が長く生きられる事を発見した。実はこれこそ「酸素の発見」だったのだが、そんなことに思いもよらないプリーストリーはこれこそ空気のフロギストン汚染を防ぐ方法と確信、このような新鮮な空気を「脱フロギストン空気」と名付けたのである。確かにフロギストン説で彼の発見を「科学的」に説明することができる。

 プリーストリーの実験結果に強い興味を持ったラボアジェは、彼の得意な「精密な質量測定」を武器に再現実験を行なう。そして、驚くべきことに気付いた。密閉した容器の中で燃焼実験を行い容器全体の重さ変化を調べると燃焼前後で全く変化しない(化学反応における質量保存の法則の発見)。ところが、燃やした材料(錫や鉛などの金属)の質量を燃焼後の質量と比較すると、なんと燃焼後のほうが重いではないか!もしフロギストンが抜けるのなら、燃焼後に軽くなるはずである!そこでラボアジェは発想を転換し、燃焼とは空気中の「何か」が燃焼物に結合することだと推測した。そして燃焼後に容器の栓を開けると勢いよく外部の空気が吸い込まれ「何か」が消費されている確証を得たのである。この「何か」こそプリーストリーが呼んだ「脱フロギストン空気」に違いないと考え、この気体に「酸素」という名前を与える。ここに燃焼の真実、つまり「酸素との化合」が発見された。これも誤ったフロギストン説があったからこそ、ようやく分かった真実なのである。

宿題18: フロギストン説の信奉者たちは、ラボアジェの実験結果(燃焼後に重くなる)に対して、フロギストンは負(マイナス)の質量を持っているからだ、と反論した。確かにそう考えると、矛盾は無くなるが、さて、決着は?

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