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* 道具・力学13:顕微鏡、望遠鏡(1590年:ヤンセン父子、1608年:リッペルスハイ)

Q13: 望遠鏡を反対側(対物レンズ側)から見ると、何が見えるか?

 顕微鏡と望遠鏡の発明には、いろいろと不明な点が多い。しかしどうやら、両者ともオランダで16世紀末から17世紀初頭にかけて発明されたようだ。両者の構成はレンズを2枚利用している点や、クイズにもあるように、逆から使えば望遠鏡と顕微鏡が入れ替わることなどから同時期の双子の発明と見るのが真実のようだ。しかし技術史上、両者の発明時期は、顕微鏡が1590年(蘭;ヤンセン父子)と早く、望遠鏡は1608年(蘭;リッペルスハイ)と20年近く遅れている。ヤンセンもリッペルスハイも眼鏡屋、そして両者とも偶然に、メガネレンズ2枚を組み合わせて見たところから前者が顕微鏡を、後者が望遠鏡を発明したと言われているのだが、どうも胡散臭い。(実際、リッペルスハイは望遠鏡の特許申請をしたものの、既に前例があるという理由で却下されている。)

 せっかく2枚のレンズを組み合わせる効果に気づいたなら、遠くを見たり近くを見たり、レンズの前後を変えてみたりと、様々なことをやるのが好奇心旺盛な人たちの本能であろう。だとすると先に見付けたヤンセンが望遠鏡も発明していたはずである。実は、この点に関しても奇妙な逸話がある。「ヤンセンは望遠鏡を偶然、逆に覗いてみたところ、物体が大きく拡大されて見えたので、これを拡大鏡に使った。」という話である。しかしこれでは望遠鏡はさらに昔に発明されていたことになってしまう。事実、ガラス工業の進んでいたイタリアではすでにデラ・ポルタ(Giambattista della Porta 、伊、1538~1615年)という人が1589年に「Magica Naturalis(自然魔術)」という本の中でカメラや望遠鏡の原理を書いていて、かなり以前から望遠鏡(らしきもの)が実在していた事実を伝えている。

 ところで複合レンズによる拡大鏡は、実に偉大な発明であった。人類に肉眼では見ることのできないはるか遠方の世界や微小なミクロな世界の観測を可能にし、新たな世界を切り開く道具を与えたからである。「見る」という行為は真実を確かめるための第一歩であり、まさに科学の扉を開ける鍵であった。ところで、科学と技術は鶏と卵のような相互関係を持っている。技術が無いと、見たり作ったり確かめることができないため科学が進まない。又一方で科学が無いと、それをよりどころにした技術が生まれにくい。1600年あたりの西洋社会は、おそらく様々な技術がちょうどうまく生み出される幸運な時代であった。そしてタイミング良く望遠鏡と顕微鏡が発明される。そしてこれらが、ガリレオの天体観測を誘導することで地動説を実証したり、フック(Robert Hooke、英、1635~1703年)の生物観測を誘導し細胞や微生物の発見に至るのである。まさに1600年あたりに生まれた技術が科学の扉を開く大きなトリガー(きっかけ)になった。

 ところで、なぜ2枚の複合レンズは、これほど大きな拡大能力を持っているのであろう?もちろん1枚の凸レンズも拡大能力を持っていて「虫メガネ」として利用されている。古代エジプトやギリシアでは既にレンズ状に磨かれた水晶などが使われていたし、2世紀の天文学者プトレマイオス( Claudius Ptolemaeus、伊、83年頃~168年頃)は凸レンズの拡大効果について記述を残している。しかし1枚の凸レンズには次のような難点がある。近くを見る場合、拡大率を上げるためには焦点距離の短いレンズが必要になるのだが、肉厚が厚くなりすぎ観察物とぶつかってしまったり、収差が大きくなり像がゆがんでしまう点。又、遠くを見る場合、一枚の凸レンズでは倒立像が小さく見えるだけで拡大像が見えない点などである。一枚レンズでは、望遠鏡は無理であり、拡大鏡としても収差を考慮すると実用的には数10倍が限界であった。

 2枚レンズにすると、対象物側の「対物レンズ」により、まずある程度の拡大像を作り、その像をさらに目の側の「接眼レンズ」でさらに拡大させることで相乗的な拡大がなされ、数100倍を超える倍率が可能になる。さらに、1枚レンズ(虫メガネ)の場合、観察対象物はレンズの焦点距離より内側に入るようにセットするため、レンズが観察物とぶつかってしまう危険性があった、しかし2枚レンズの場合、対物レンズの焦点距離より外側に対象物をセットするため、この危険性が回避される。さらに、複合レンズの場合、1枚で無理な拡大をする必要がなく収差補正が可能となるため、ゆがみの少ないきれいな像が得られるのである。

 望遠鏡の場合は、遠方の物体をまず長い焦点距離(f1)を持つ対物レンズで縮小像(倒立実像)にして接眼レンズの焦点近くまで引き寄せる。そして短い焦点距離(f2)の接眼レンズで、この像を虫メガネのように拡大して見せると、その拡大率は2つのレンズの焦点距離の比f1/f2倍となる。例えば、f1=1mの対物レンズと、f2=1cmの接眼レンズを組み合わせると100倍の倍率の望遠鏡となる。尚、接眼レンズに凸レンズを使う(ケプラー式)と倒立像が、凹レンズを使う(ガリレオ式)と正立像が得られる。クイズにあるように望遠鏡を逆さから覗くと、遠方の物体はちょうど逆の比率f2/f1倍の縮小像となる。しかし近くの物体を見た場合は最初の接眼レンズ(凸レンズの場合)で拡大像を作り、その像を対物レンズでさらに拡大しながら見せる事になるため顕微鏡のような拡大像が得られるのである。これはちょっとした驚きである。

宿題13: 現在の顕微鏡は何倍程度まで拡大して見る事ができるか?

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