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* 道具・力学:番外編1 劣等生?アリストテレス

番外1:クイズはありません

 それにしてもアリストテレスは間違いを犯しすぎている。権威のもとで自分の哲学を主張し科学の進化を妨げて来たと言われてもしかたがないほど一杯。それなのにあまりに有名なこの人って、いったい何モノなのだろう?科学史上の悪人かそれともやはり万学の天才なのか?その真実に迫ってみよう。

 アリストテレス(前384年~前322年)は、マケドニア王の侍医の息子として生まれ、 17歳でプラトンが主催する学園に入門。そこで20年間学び、前347年にプラトンが死ぬまで教師として後進の指導にあたった。プラトンの死後、アレクサンダー王子(後の大王)の家庭教師となり弁論術、文学、科学、医学、そして哲学を教える。前335年に王子が即位すると、アテネに戻り自分の学園を開く。大王の死後、アテネでマケドニア人に対する迫害が起こったため、前323年母方の故郷に移るがそこで病に倒れ、前322年に死亡。輝かしいエリート人生を歩み、ソクラテス、プラトンと共に、古代ギリシアの3大哲学者と言われる。さらに多岐にわたる自然研究の業績から、「万学の祖」とも呼ばれている。

 さて、この天才くん、いかに間違いを犯したか整理してみると、

・現在物理の真理に最も近い「デモクリトスの原子論」を否定し、間違った4元素説を主張する。
 2000年間、間違った考えを人類に植えつけた(1803年ドルトンにより修正)。
・地球が宇宙の中心であり、天体は地球の周りを「円運動」するという「天動説」を主張。
 さらに地上と天空での運動は別の法則で支配されるとした
 (1543年:天動説はコペルニクスにより修正、1618年:円運動はケプラーにより修正)。
・物体が運動を続けるためには外部からの強制力が必要と考え、「強制力が無いと静止する」とみなした
 (1583年ガリレオの慣性の法則によって修正)。
・「重いものほど速く落ちる」と主張(同ガリレオにより修正)。
・「真空は存在し得ない」と主張(1643年トリチェリにより修正)
とまあ、いろいろミスをやっている。今の日本で受験をすると落第は間違いない。

 アリストテレスはなぜこのような間違いを犯したのであろう?頭が悪かったのだろうか?そんなことは無い、天才中の天才と言われていた人である、アホのわけが無い。ではなぜ間違えるのか?それは「天才だから間違える」のである。むしろ間違える人こそ天才と呼べるのではないだろうか?「間違えない人=何もしない人」である。多くを考え、多くにチャレンジする、そして人にできない発想をする、そして間違えるのである。もちろん間違えてばかりいては、やはり困る。しかしアリストテレスは多くの優れた洞察を行い真理を見出し、多くの人に影響を与えたのも事実である。自然科学的の分野においては特に生物学に関して非常に鋭い観察と考察を行っている。しかし、物理系は大いに外した。どうやらこの人は物理系が苦手だったのかもしれない。

 科学はガリレオの項に見るように、基本的に実験により真偽が決定される。いくら天才的な論理を構築しようが、正確な実験一つで完全否定されてしまう事がある。実はアリストテレスは実験が嫌いだった。実験より感覚的な経験を基にした哲学思索を好んだのである。これはプラトン学派の流れと言ってよい。一方この流れに乗らなかったのがアルキメデスで、彼は実験が大好きだった。それゆえ、アルキメデスの原理はいまだに正しい科学の原理として使われているのである。まさに科学は「論より証拠」と言える面がある。

 一方、論理学や弁証法はアリストテレスの真骨頂であり、ここでの成果は多大である。又、科学の分野においては生物学にアリストテレスの天才性が見られる。500種以上の動物をその正確で注意深い観察により見事に系統分類した。とりわけ海の生物に関して優れた分析を行っている。例えばイルカであるが、これは海に住む魚類と考えそうだが、彼はイルカが胎児を胎盤で育て、子供として誕生させる様子から、これを陸の仲間に分類したのである。この先見性は革新的であり、後の生物学者は2000年間もこの見事な分類を理解できなかったと言われている。さらにこの正確無比な分類によって進化の考えを見出して行ったのだが、この考えも約2000年後のダーウィンによってようやく正当化される。これほどまでにアリストテレスの洞察は生物学に関しては突出していたのである。

 結論として、アリストテレスはやはり天才だったといえるだろう。一つでも真理と呼べる優れた創造や発見を行い、その後の人類に大きな影響を与えていればそれは天才の証明である。他は100個間違えてもいいのである。もしその人が権威を持っていた場合、その後の人々はえらく迷惑を受けるが(下手をするとブルーノの様に、正しいことを主張しても火あぶりになって殺されてしまう)、いつか必ず次の天才が現れ真理に到達する。間違った考えも、ある意味で、次の世代への問題提起になり動機付けになるといえるのではないだろうか?そのような意味で、ある課題を取り上げ、間違った考えを世の中に提言すること、これは決して意味の無いことではない。考えるべきテーマ(課題)を取り上げたという能力、これまた天才の証明なのであろう。

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