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* 道具・力学10:発明家レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519:Leonardo Da Vinci)

Q10: レオナルド・ダ・ヴィンチは、ヘリコプターや羽ばたき飛行機、バネ動力自動車、戦車、リフト、はたおり機など多くの先駆的な発明を行っている。しかし当時興味を持たれていたある装置だけは発明できず、「こんな空論をもてあそぶのは錬金術と同じくらい馬鹿げたことだ」とそれを放棄した。さて、一体その装置とは何だったか?

 イタリア・ルネッサンス時代に活躍した万能の天才、ダ・ヴィンチ。画家としてモナリザや最後の晩餐など、最高級の芸術作品があるほか、工学、医学、数学にその天才を遺憾なく発揮している。15世紀半ば、ヴィンチ村の名門ヴィンチ家に生まれたレオナルドは、公証人の父セル・ピエロ・ダ・ヴィンチと彼と未婚の母カテリーナの間にできた私生児であった。レオナルド誕生後なんと母は別の家に嫁ぎ、義母に育てられるが、義母も12歳の時に亡くなった。いかなる理由か正規の学校教育は受けておらず、注意欠陥・多動性障害児であったらしい。又そのためか、左利きの彼は奇妙な「鏡文字」(左右が逆転した文字で知能未発達児によく見られる)を好み、その後の膨大なノートはほとんど鏡文字で書かれている。14~15歳でフィレンツェに移りここで画家見習いを始めるが、師よりその才能を認められ、画の部門を任されるようになる。同僚にはボッティチェリがいた。一生独身で通し、芸術家、数学者、作家、軍人などと幅広く交友を楽しんだ。

 ところで、発明家としてのレオナルドだが、その興味は機械工学の分野に集中している。飛行、水、車というものに異常な好奇心を持ち、数多くの提案を美しいデッサンで残した。その構成は斬新で、後の機械の先祖と言えるものが多い。クイズに示したようにヘリコプター、パラシュート、羽ばたき型飛行機などの飛行物体、バネ式推進自動車、リフトなどの移動乗り物、はたおりのための自動織機、武器としての戦車、マシンガン、投石器など、様々な機械仕掛けを考案している(この点アルキメデスに似ている;第6話参照)。そしてそのような機械を考案する中で、天才レオナルドをしても、どうしても発明できなかったのが「永久機関」であった。彼は、この永久運動機械に非常に興味を持ち、様々な考案を重ねるが、どれも動き続けないことに気付く。そしてついに彼は永久機関を作ろうとする人を「錬金術師」と同じ仲間であり空論家だ、と退けたのである。

 「できない」事の証明は難しい。「できる」事は一つ作り上げればそれが証明になるが、出来ないことは、いくら出来ない例を挙げても、誰かが一つ作ってしまえばそれで否定されてしまうからだ。レオナルドは様々な発明を行いながら、永久運動を考察し「永久機関はできない」と強く感じたのであろう。エネルギーの概念もエントロピーの概念もまだないこの時代にこのような洞察ができた事はすばらしい能力と言える。そしてレオナルドの指摘から350年後、確かに永久機関は存在し得ないことが熱学的な考察から証明されるのである(1850年:ヘルムホルツ、クラウジウス)。現在、永久機関に関する特許申請は一切受け付けられない事になっている。

 近代科学という考え方が生まれ、人類の自然界への理解や技術への応用が進むのは1600年からであり、そのスタートを切る象徴となった人はガリレオやギルバート(英1544~1603)である。ガリレオは力学や天文学を、ギルバートは電気・磁気学を生み出し、その後の発展のきっかけを与えた。レオナルドの活躍した1500年あたりは近代科学の夜明け前といった時代であり、科学技術上の大きな「事件」は他にグーテンベルグの活版印刷発明(1450年ごろ)があるくらいで、他に見るべきものは無い。つまり紀元前250年ごろのアルキメデスからレオナルドの1500年の間に渡る1700年間は、少なくとも西洋において、科学技術の空白期間が続いたのである。これはなぜだろう?

 レオナルドはこれに関してある一つの意見を手稿(メモ)の中で述べている。自らの事を「経験の弟子」と呼び「智恵は経験の娘である」とその経験(実験)の重要性を指摘した。そして、「その理論が経験によって確証されない思索家たちの意見は避けるべきだ」と主張している。つまり頭の中だけで考えられ実証されることの無い空論は意味が無いとみなしたのである。古代ギリシア時代に珍しく実験を好んだアルキメデス、それからレオナルドまでの1700年間はまさに経験を軽視する思索家の時代であった。その考えかたの中心となったのはアリストテレス的な弁証哲学である。一方レオナルドは全くアルキメデス的な人であり実験、実証を好んだのである。その発想した機械じかけも非常にアルキメデスと共通する実用的センスを持っていた。またあらゆる分野でその才能を開花させ万能の天才とされ、当時のルネサンスの中の象徴的な存在になってゆくのである。

宿題10: レオナルドの絵画作品は意外と少なく、現存するものは17点程度しかない。しかも不思議なことにこれらの絵には共通した特徴がある。それは何か?

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